2011年4月8日金曜日

豊かさと原子力


震災後、東京でもスーパーやコンビニなどで品不足が発生しています。
ガソリンや水は群衆パニックによる一時的な不足でしたが、納豆やビール、牛乳など工場が被災したため生産量が落ちて品不足になっている商品も多いと認識しています(紙やインクの不足も表面化しているようです)。

空になった陳列棚を見て北朝鮮や旧ソ連を連想し、暗澹たる気分になった方も多いでしょう。
普段なかなか実感することはありませんが、豊かさとは結局のところ生産能力です。
生産能力が落ちると、国は貧乏になります。

ある日朝起きたら、あらゆる店舗で商品の数が10分の1に減っていたとしましょう。
ほとんどの棚が空に近い状態です。
みな昨日までと同じように買い物したいのに、商品は10分の1しかありません。
ほどなくして、全ての商品の価格が10倍前後まで上がります。
となると、昨日まで100万円の現金を持っていた人は、今日も現金100万円を持ってはいますが、実質は10万円まで財産が減ってしまったことになります。
今日からは100万円払っても、昨日までの10万円分に相当する商品しか買えないからです。

単純かつ極端に書いていますが、北朝鮮や旧ソ連で起こったのはこういうことです。
最近の日本は将来への不安などのため需給ギャップマイナス状態が続き、豊かであるとは実感しづらい状態でしたが、生産能力の観点では日本は豊かであり続けていたのです。

しかし3.11以後は、生産能力を大きく落とす(=豊かさを大きく損なう)可能性があります。
電力不足のためです。

下のグラフは主要各国のGDPと消費電力量を並べたものです。
GDP(国内総生産)と電力量は、完全な比例関係にあることがわかります。
日本だけ見ても、1970年から2010年の間に、GDPは2.9倍、消費電力量は2.5倍とほぼ比例して増えました。
設備が先か電力が先かという議論はありますが、設備の生産自体にも電力が必要であることを考えると、電力は国の豊かさを決める最重要ファクターの一つであることは確かです。



その電力が、3.11以降深刻に不足しています。
東京電力管内のGDPは日本の総GDPの40%を占めると言われていますが、その東電が原発トラブルで総発電能力の2割強を失ってしまっているからです。


政府は「大口需要先」つまり主に製造業企業に、今年の夏の使用電力の25%削減を要請すると言います。
企業も本社ビルの冷房や照明を止めるなどするでしょうが、工場の操業にも影響を与えることは間違いありません。
工場が止まるということは、生産が止まるということです。

短期的には節電などで乗り切るしかないわけですが、より大きな問題は、長期的なエネルギー政策をどうするか、端的に言ってしまえば原発をどうするかでしょう。
次の総選挙では、原発問題を中心としたエネルギー政策が大きな論点になるはずです。
国民投票で原発の存廃を決めるべきだ、などの声も上がるかもしれません。

ファクトとして、日本の電力の3割は原子力で賄われています(いました)。
僕も、原発反対派の人も、推進派の人も、皆等しく日本の豊かさを享受してきたはずです。
その豊かさは(反対派の人は認めたくないと思いますが)、原子力がその3割を担ってきた、豊かな電力に支えられたものだったのです。



選択肢としてはざっくり以下でしょうか。
1. 今すぐ原発全廃
2. 期限付きで全廃、その間に代替エネルギーを開発する
3. 今ある原発は存続、新設はしない
4. 今ある原発も存続、新設もする

僕の考えは・・・卑怯なようですが、今のところ態度保留です。
1は物理的には不可能ではないでしょうが、経済的な影響をあまりに無視・軽視した考えです。
一見2が現実的なようではありますが、代替エネルギーに関する明確なビジョンなしには全面同意はしかねます。もちろん◯年後に全廃とあえて制約条件を課されることでイノベーションが生まれるという考え方もありますが。。。

いずれにしても、他人に判断を任せず、個人個人が確固たる自分の意見を持つべき問題だと思います。
自分で情報を集め、自分で分析し、自分で考えるべき問題です。

僕も、考えます。

--
写真はアイスランド、レイキャビク郊外。というかレイキャビクから車で15分も走るとあとは延々とこんな感じ。人口、30万人ですから。


0 件のコメント: